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大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 (Department of Comprehensive Kidney Disease Research, Osaka University Graduate School of Medicine)

TEL. 06-6879-3747

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2 バイオ棟6階 E60-01

『 コレカルシフェロールの投与が 血液透析患者の腎性貧血および骨代謝に 及ぼす影響を検討するプラセボ対照・二重盲検・ランダム化比較試験』

研究の目的

 慢性腎不全によって透析を受けている患者さんの多くは、腎性貧血という合併症を持っています。骨髄で赤血球を造らせる働きを持った蛋白質(ホルモン)を腎臓が産生しているため、腎不全の患者さんは このホルモンを腎臓が産生できなくなり、貧血になってしまいます。貧血になると 疲れやすくなったり生活の質が落ちたりするので、ほとんどの患者さんは定期的に赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の注射を受けています。
 しかし、この貧血治療薬にも血圧の上昇や血液の凝固傾向などといった副作用が認められるため、健常者と同程度まで改善するほど多くの量を投与すると、かえって心血管疾患の発症や死亡のリスクが高くなることが分かっています。透析患者さんは、何らかの理由でESAの効き目が悪い場合が少なくないのですが、そのような方は多くの投与量が必要となり、副作用が出現する危険性が高くなります。このため、現在では正常範囲をやや下回る程度(Hb 10.0~12.0 g/dL)を管理目標としながら、一定量以上のESAをしないように注意しています。
 ESAを使った貧血治療が効きにくい原因として、鉄の吸収や生体内利用を抑制する働きを持ったヘプシジンというホルモンが注目されています。血液透析患者さんは、動脈硬化や感染症、組織障害など、炎症によってヘプシジンが上昇しています。しかし最近、健常人に対する高用量の天然型ビタミンDの投与で、血中ヘプシジン濃度が低下することが示されました。実験によって、ビタミンDが直接的にヘプシジンの産生を抑制することが証明されていますが、ビタミンDには過剰な炎症を抑える効果も示されており、これを介した間接的な効果も考えられます。
 日中の活動性が低下しがちな透析患者さんではビタミンDが欠乏しやすく、ビタミンDを補充することでヘプシジンが低下し、ESAを用いた貧血治療薬が効きやすくなれば、より安全で効率の良い貧血治療ができるようになると期待されます。さらに天然型ビタミンDは、医薬品として使用されている活性型ビタミンD製剤に比べ、血管の石灰化を促進させる高カルシウム血症を引き起こす危険性が低く、血中で安定して長期間存在できることから、数ヶ月分をまとめて飲むことも可能です。このような服用方法は、合併症のために多くの薬剤を内服していることが多い透析患者さんにとって、服薬の負担を軽減できるものと考えられます。
 しかし、医薬品として活性型ビタミンD製剤の投与を受けていることが多い透析患者さんにおいて、天然型ビタミンDの効果があるのかどうかは十分に分かっていません。国際的なKDIGOガイドラインにおいても、天然型ビタミンDについての研究が必要であると記載されています。また、服用方法の違いが、天然型ビタミンDの骨に対する効果にも違いを生んでしまう可能性も指摘されています。一般の高齢者では天然型ビタミンDの骨折予防効果が ある程度 確立されていますが、4ヶ月分を1度に内服すると有効性が認められないという報告や、逆に骨折が多くなってしまったという報告もあります。
 そこで本試験では、① 透析患者さんに対する天然型ビタミンDの補充によって、血中ヘプシジン濃度が低下して、ESAを使った貧血治療の効果が改善するかどうか を検証するとともに、② 週3回の頻度で内服する場合と、これまでに害が報告されていない1ヶ月分の量をまとめて内服する場合を比較して、ヘプシジンや骨代謝への効果に差が認められるかどうか を明らかにすることを目的としています。私達は、この研究から得られた知見をCKD管理の向上に役立て、将来の患者さんに より良い治療を提供したいと考えています。

研究の方法

 本研究は、週3回の維持血液透析を行っている慢性腎不全患者さんを対象としています。

◆実施予定期間と目標症例数
 本研究の実施予定期間は、2015年12月末までとなっています。患者さん個人に関しては、参加登録から試験終了までは6ヶ月となっています。また、計90人の患者さんに参加していただく予定です。

◆介入の割り付け
 この研究では、①『コレカルシフェロールによる天然型ビタミンDの補充』と『プラセボ(偽薬)』の効果を比較すると同時に、②内服間隔を『週3回にした場合』と『月1回にした場合』を比較するために、4つのグループに分けて治療を行います。

 プラセボ(偽薬)とは、実薬(本試験ではコレカルシフェロール)と外見や匂い、味などが全く同じでありながら、有効成分を全く含まないもののことを言います。臨床試験においては、どちらの群に割り当てられているかが分かってしまうと、患者さんの行動に変化が起きたり、有効性を評価する研究者の判断に影響したりすることで、科学的に介入の有効性を検証することが困難になってしまうことがあります。これを防止する目的で、プラセボ(偽薬)が用いられます。患者さんも医療現場のスタッフも、誰がどちらに割付けられたかは分からないため、この方法を二重盲検化といいます。
 どのグループになるかは、クジを引くような方法で決められます。コレカルシフェロールの投与を受ける確率はプラセボ(偽薬)の投与を受ける確率の2倍ですが、内服間隔については同じ確率となります。どれに割り付けられるかを患者さんも担当医師も選択することができません。この方法を 無作為割付(ランダム化)といいます。

◆投与方法
 本研究では、(株)分子生理化学研究所によって作成された天然型VD3カプセルを使用します。有効成分を含んだカプセルには、以下の2種類があります。
       ① 天然型VD3カプセル( 3,000 IU) ② 天然型VD3カプセル(33,000 IU)
 週3回投与群では、週3回の血液透析終了後に、天然型VD3カプセル①、もしくは これに対応するプラセボを1カプセル内服していただきます。
 月1回投与群では、第3月曜日または火曜日の透析終了後に、週3回投与群の翌1ヶ月分に相当する量の天然型VD3、もしくは これに対応するプラセボを内服していただきます。内服量は、翌月の第3週まで4週間ある場合は『①×1カプセル + ②×1カプセル』、5週間ある場合は『①×3カプセル + ②×1カプセル』となります。
【例:8月開始の場合】
2014年   8月18・19日: ①×1カプセル + ②×1カプセル (計36,600 IU)
     9月22・23日: ①×3カプセル + ②×1カプセル (計42,500 IU)
     10月20・21日: ①×1カプセル + ②×1カプセル (計36,600 IU)
     11月17・18日: ①×1カプセル + ②×1カプセル (計36,600 IU)
     12月15・16日: ①×3カプセル + ②×1カプセル (計42,500 IU)
2015年  1月19・20日: ①×1カプセル + ②×1カプセル (計36,600 IU)
 この内服方法による3ヶ月毎の積算投与量は、月1回投与群と週3回投与群の両群で一致するよう、作製されています。プラセボ群は、①と②に対応するプラセボを、同量ずつ内服していただきます。なお、本研究における内服量で有害事象が増えるということは、これまで示されていません。

◆スケジュール
●治療開始前に血液検査と、サプリメントの摂取について問診を行い、介入の割り付けを行います。
●先述の投与方法に従って、天然型VD3カプセルを内服していただきます。
●試験期間中、新たなサプリメントの摂取を開始することはできません。もし希望される場合は、試験を中止しますので、その旨を担当スタッフまでお伝え下さい。
●開始時・2日後・3ヶ月後・6ヶ月後の透析開始時に、通常より10 cc多めに採取いたします。


血液検査項目の測定時期

可能性のある副作用

 本試験で使用する天然型ビタミンD3(コレカルシフェロール)は、一般的に市販されている健康食品(サプリメント)と同じ成分です。本試験の用量では、これまでに明らかな副作用は報告されていませんが、1度に極めて大量に服用した場合には、高カルシウム血症や骨折の危険性が増す可能性も報告されています。高カルシウム血症の症状としては 筋力の低下や便秘、悪心・嘔吐、掻痒感、尿路結石などがありますが、通常業務として行われる月2回の血液検査でモニターを行っていきます。

健康被害が生じた場合

 本研究において、万が一 サプリメントの副作用によって入院が必要な程度の疾病や障害などの健康被害が生じた場合には、加入している臨床研究保険に保険金の支払いを申請します。

研究計画及び研究成果の開示

 本研究の計画や その成果に関する情報は、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN)のホームページに随時公開されます。さらに詳しい内容を知りたい場合は、他の患者さんの個人情報保護やこの研究の独創性の確保に支障がない範囲内で、ご説明致します。あなたが同意されれば、御家族等(親権者、配偶者、兄弟姉妹、成人の子、後見人など)を交えてお話しすることも可能です。

知的財産権の帰属

 なお本研究の成果により、何らかの特許権等や それによる経済的利益が生み出される可能性がありますが、全ての権利は研究機関、民間企業を含む共同研究機関 および研究遂行者などに帰属します。

研究への参加にともなう費用について

 この研究に参加いただくことによって、患者さんの通院日数が増えたり費用的な負担が生じたりすることはありませんが、謝礼や交通費などの支給もありません。研究期間中に行われる検査のうち、保険適用内のものは 全て通常診療の範囲内となっています。保険適用外の天然型ビタミンD3カプセルや一部の研究目的の特殊検査(25(OH)ビタミンDやヘプシジンなど)は、研究費より支払われます。

参加・不参加や 同意の撤回に 制約はありません

 この研究への参加は、あなたの自由な意思で決めてください。たとえお断りになっても今後の治療において不利益を受けることはありません。またこの研究への参加に同意した後にも、いつでも同意を撤回することができます。この場合も、診療にあたって不利益を受けることはなく、あなたに合った治療法を行っていきます。同意の撤回を希望される場合は、遠慮なく担当医師にお伝えください。あなたに関わる研究結果を破棄し、それ以降は 得られた情報を研究目的に用いないようにすることが可能です。ただし、すでに研究結果が公表されていた場合は、これを破棄することはできません。

個人情報の保護

 この研究で得られた情報は、大阪大学のデータセンター(責任者:老年・腎臓内科 小尾佳嗣)へ送付されますが、この際には氏名や住所など、個人が特定できるような情報は削除されます。代わりに新しく符号や番号をつけて匿名化を行い(連結可能匿名化)、研究対象者とこの符号(番号)を結びつける対応表は外部に漏れないよう当院で厳重に保管します。これらの匿名化された情報は、研究終了後5年間に渡り保存されます。また本研究の結果は、貴重な資料として学会や医学雑誌に公表されることがあります。その場合、患者さんの個人情報は、外部からは特定できないよう厳重に管理されます。また、この研究が適切に行われているかを確認するために、関係者がカルテなどを見ることがありますが、その場合もプライバシーは守られます。

知的財産権の帰属

 なお本研究の成果により、何らかの特許権等や それによる経済的利益が生み出される可能性がありますが、全ての権利は研究機関、民間企業を含む共同研究機関 および研究遂行者などに帰属します。

資金源及び関連組織との関わり

 この研究には、大阪大学大学院 医学系研究科 腎疾患統合医療寄附講座の研究費が使用されます。当講座は、中外製薬(株)および バクスター(株)から 研究資金の寄付を受けています。また、この研究は(株)分子生理化学研究所との共同研究であり、天然型ビタミンD3カプセルの提供を受けています。

資料及び試料の利用と保存

 この研究で得られたデータ、および血液や尿は、研究終了後も 大阪大学大学院医学系研究科 老年・腎臓内科で保管され、他の研究に利用する可能性があります。これらの2次利用については、別紙「包括同意説明文書」をよく読んだ上で、ご協力いただける場合は、包括同意書にご署名をお願いします。お断りになる場合は、研究終了後、当院の規定に従って廃棄します。

研究終了後の対応

 研究終了時に、本試験で検討する治療法のうち、どれが最も利益があるかが判明した場合、最も適切と考えられる治療法を全ての患者さんに提供します。

研究組織

◆主任研究者(試験全体を統括する研究者)
  椿原美治(大阪大学大学院 医学系研究科 腎疾患統合医療学)
◆データセンター(データ管理を行う施設)
  大阪大学大学院 医学系研究科 老年・腎臓内科 (責任者:坂口悠介)
◆研究分担施設(実際に研究を行う施設)
  東香里病院、小尾クリニック、双葉クリニック、西診療所、あけぼのクリニック、 第二あけぼのクリニック

お問い合わせ先

 本研究に関し、疑問、苦情などある際には、下記研究事務局までご連絡ください。

【研究事務局】
大阪大学大学院 医学系研究科 腎疾患統合医療学
事務局責任者:濱野高行(寄附講座准教授)
住所:大阪府吹田市山田丘2-2
電話番号:06-6879-3857


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